百事通!《铃芽之旅》第二章第二节小说中日双语翻译
だからいま、私は走るべき方向は
所以我现在应该奔跑的方向是
——でもせめて、日焼け止めを、最初の駅前で買っておけば良かった。ようやく傾き始めた太陽を恨めしげに睨みながら、私は今日何度目かになる後悔をまたなぞった。私の肌、絶対に焼けた。ぜったいに、今夜はお風呂で沁みる。というか、今夜お風呂に入れる可能性が果たしてあるのか。ていうか、このまま陽が暮れたら今夜はどこで過ごせば良いのか。まさかの初四国で初野宿なのか。二晩連続ノーシャワーなのか。私たちの歩いている山道の、ガードレールを狭んだ下の大きな貯水池に目をやりながら、今夜もお風呂に入れなかったら最悪水浴びかなと絶望的な気持ちで思う。
(相关资料图)
——但至少在最初的车站买了防晒霜就好了。我怨恨的蹬着终于要下山了的太阳,一天里我已经反复后悔好几次了,我的皮肤绝对被晒黑了。今晚洗澡的话我一定会沉浸在里面,话说,今晚真的还有机会洗澡吗。再说了,如果太阳就这样落山了,我今晚又该住在哪里呢。不会第一次的四国之旅也是第一次在外露宿吧。真要连续两晚不洗澡吗。我一边看着我们走的山道栏杆下的巨大蓄水池,一边绝望的想着如果今晚洗不了澡最坏的结果就是去野浴了。
SNSに投稿された写真を頼りに、私たちは電車に乗ったり降りたりを繰り返し、ダイジンこと白猫の足どりを追い続けた。しかし写真の場所にたどりつく頃には別の場所の写真がアップされるといった具合で、これではきりがないのだった。さりとて現状だと他の手掛かりもなく、今は二時間前に投稿された写真の場所に私たちは向かっている。ダイジンがみかん畑の中でしなを作っている写真と、「うちの農園に白猫ちゃんが訪問!#ダイジンといっしょ」という投稿。この山道を登った先が、その農園にはずなのだ。そしてここまでの道のりにコンビニも商店も一軒もなく、日焼け止めは買えないままなのだった。
借助SNS上投稿的照片,我们反复上下着电车,不断地追寻着大臣白猫的足迹。但是当我们好不容易到达照片上的地方后,出现在其他地方的照片又被上传了,这样下去要没完没了了。我们现在也没有其他线索,于是正向着两小时前发布的照片地点走去。上面是大臣举止优雅的在橘子地里的照片,写着【白猫来探访我们农场啦 #和大臣一起】登上这条山路后应该就是那个农场了。而且这条道上没有一个便利店和商店,还是买不到防晒霜。
「……!」
背後から、バイクの音が聞こえてくる。
「草太さん!」
私は慌てて声をかけて、数メートル先を歩いている椅子へと走り、背中から持ち上げた。間一髪、椅子を持った私の脇を原付バイクが走り抜けていく。
「……見られなかったよね?」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
“……!”
从背后听到了电动车的声音。
“草太先生!”
我赶忙喊了出来,跑向了几米远前正走路的椅子旁,把它抬到了背后。千钧一发之际,电动车从拿着椅子的我的旁边经过。
“……没被看到吧”
“你不要那么担心呀”
と彼が笑う。でも草太さんには危機感が足りないと、私は思う。映画の『トイ·ストーリー』みたいにへんな人にさらわれちゃったらどうするのよ。猫探索に加え、椅子奪還のミッションまで発生してしまう。とはいえ子供椅子を持ち続けるのも意外と腕が疲れるもので、人目がない場所では結局自力で歩いてもらっているのだけれど。
——と、坂の上からガタン!と何かが落ちたような音と、キキイっというブレーキ音が響いた。続けて「やばっ」という女性の声がかすかに耳に届く。
他笑着说道。但我还是觉得是草太太没有危机感了。如果像《玩具总动员》一样被奇怪的人绑架了可怎么办啊。这样算上找猫,还会触发夺回椅子的任务。话虽如此,一直拿着椅子的手腕意外的很累,在没人注意的地方我还是让它自己走了。
——忽然,坡上传来的咔哒咔哒的声音。是什么东西掉下来和刹车的声音。“不好。”我的耳边隐约传来了一个女性的声音。
「ん?」私は坂の上を見る。「……ええ!?」
狭い坂道を、大量のみかんがゴロゴロと転がり落ちてくる。さっき通り過ぎたバイクの荷台に大きな箱が積まれていたことを、私は思い出す。
「えええーっ!」
道幅いっぱいに広がりつつ迫ってくるみかんの群れ。立ちつくしてしまう私の体から、とっさに草太さんが飛び降りた。驚いて目で追うと、道路脇の畑にあった防獣ネットを脚にひっかけ、Uターンして戻ってくる。
“嗯?”我向坡道看去。“……诶诶!?”
在狭窄的坡道上,大量的橘子正咕噜咕噜的滚下来。我想到了是刚刚经过的电动车后台上放着的箱子。
“诶诶诶——!”
一堆橘子沿着道路向我逼来。草太从呆站在那里的我的身上跳了下来,我惊呆的看着它,它把道路旁边的防兽网缠在了脚上,然后转了个圈回来。
「鈴芽さん、そっち押さえて!」
「え、あ、うん!」
草太さんがネットを引きずったまま私の前を通り過ぎ、私たちは道の両端でネットを広げる格好になる。と、ほとんど同時にみかんたちがドドドドッと網に収まった。
「……嘘じゃろうっ!?」
声に顔を上げると、坂の上でヘルメットを被った女の子が私たちを呆然と見下ろしていた。草太さんが今さらに無機物のふりをして、コトンと倒れる。転がってきたみかんを一つ残らず、私たちはキャッチすることに成功したのだった。
“铃芽小姐,抓住这边!”
“诶,啊,好!”
草太拿着网从我前面跑过,我们在路的两边展开了网,几乎同时,橘子们被噗通通的都收进了网里。
“……骗人的吧!?”
我抬起了头,只见坡上有个戴着头盔的女孩正呆呆的低头看着我们。然后草太现在才装作无机物的样子,咚的倒了下来。这些掉下来的橘子被我们成功一个不少的拦了下来。
「しんから助かったわ―、ありがとう!」
茶髪をショートボブにした赤い学校ジャージの女の子が、私の両手を握ってぶんぶんと振っている。私はその勢いにちょっと戸惑いながら、いえいえ……とこわばった笑顔を作る。
「あんた、魔法使いみたいじゃねえ!一体どうやったん?」
「あ……」私は動く椅子を目撃されずに済んだらしいことにほっとしながら、「なんか、とっさに体が動いた……?みたいな?」と曖昧に言う。
“但真是帮大忙了——,谢谢!”
一个茶色短发穿着红色学校运动服的女孩正握着我的双手疯狂挥舞着。我一边对她这番举动感到困惑,一边又僵硬的笑着说没什么。
“你好像魔法使啊!到底怎么做到的啊?”
“啊……”我对好像可以逃过会动的椅子这件事而松了一口气,“就,身体突然动起来了……?这种?”我含糊的回答。
「ええ~、しんからすごいわ!」
なんだか心から感動してくれている様子。ぽっちりとメイクされた丸い瞳が、きらきらと輝いている。
「うち、千果。高校二年」
と、彼女が自分の胸を指差す。
「あ、同い年! 私は鈴芽」
「へえ、すずめ。可愛い名前や!」
“诶诶~,你真的好厉害啊!”
她好像一副发自内心被感动了的样子,那通过化妆圆圆的眼睛正闪闪发着光。
“我叫千果,高中二年级。”
说着,她指了指自己的胸口。
“啊,我们一个年级!我叫铃芽。”
“诶,铃芽,好可爱的名字啊!”
うわ、この子距離が近い。でも同じ歳だと聞くと、私にもとたんに気安さが湧き上がってくる。
「ね、鈴芽の制服 ってー」いきなりの呼び捨て。でもそれがぜんぜん嫌な感じではなく、彼女は私の姿を上から下までじっと見て言。「このへんの子やないよね?」
「あ、うん一」
私も呼び捨てで名前を呼ぼう。ふいに浮きたつ気持ちでそう決めて、私は事情を(だいぶ伏せつつも)話した。
哇,她好自来熟。但知道是同龄人,所以我突然觉得很安心。
“呐,铃芽的制服——”她突然换了称呼。但是完全没有让人讨厌的感觉,她把我的全身上下都看了个遍说道“你不是这附近孩子吧”
“啊,嗯——”
我也直呼了她的名字,我突然有些激动的决定了,要把事情说出来。(以一种隐晦的方式)
「え、猫を探して……九州からあ!?」
スマホに表示されたみかん農園の写真を見ながら、千果が驚いた声を出す。私たちは道路脇の空き地に並んで座っている。あたりを満たしていた蝉の声は、気づけばヒグラシの合唱に置き換わっている。道路下の貯水池 の水面の色も、明るい青から緑がかったグレイに沈みつつある。
「この子、鈴芽の飼い猫なん ?」スマホを私に返しながら千果が訊く。
「ええと、そういうわけでもないんだけど……」
“诶,为了找猫从九州来!?”
千果一边看着手机上橘子地的照片,一边吃惊的叫出声。我们并排的坐在路边的空地上。周围充斥了蝉鸣声,等我回过神来,已经变成暮蝉的合唱声。道路下面蓄水池也从明亮的蓝色变成了灰绿色。
“这孩子是铃芽养的猫吗?”千果还回了我的手机问道。
“嗯,也不能这么说……”
私は返事を濁して、彼女からお礼にともらったみかんを一房口に入れた。びっくりするくらいに甘い。 渇いた喉が心地好く湿り、歩き疲れた体に甘さがすーっと染み込んでいく。今度は六房くらいまとめて口に入れる。コンビニのオレンジジュースの千倍おいしい。
「これ、日焼けがリセットされそうなくらいおいしい!」
そう伝えると、千果はとても嬉しそうに笑った。
我含糊的回答着,把她给的谢礼,一瓣橘子放进了嘴里,甜的惊人。我那干咳的喉咙被惬意的浸湿了,疲惫的身体被这甜蜜给浸透了。这次我把六瓣橘子都放进了嘴里,这比便利店的橙汁好吃一千倍。
“这个,好吃到像是把今天的晒伤都治愈了一般!”
这样说后,千果非常高兴的笑了起来。
「さっきはごめんな。道路が段々になっとってな」
「段々?」
「うん。タイヤで思いきり段差に乗ってしまって、ゴムバンドが弾みで外れてしまて。昨日まではそんな段差なかったはずなんやけど——ってまあ、ケースをちゃんと固定しとらんかったうちが悪いんやけど」
「大変だね……。それって、バイト?」
「ううん、うちの親、客商売やっとるから。このみかんはもうお客さんには出せんから、加工に回してもらうわ。だから好きなだけ食べて、紫外線、ようけリセットして」
“刚刚真是抱歉,道路高低不平的。”
“高低不平?”
“嗯,轮胎直接到障碍物上了,橡胶带直接弹飞了,昨天还没有这么不平来着,虽然不好好固定箱子也是我的错。”
“真不容易啊……是打工吗?”
“不是,我家是做服务业的,这些橘子已经不能提供给客人了,得送去加工才行。所以你想吃多少吃多少,好好治愈你的紫外线吧。”
私たちは一緒に笑う。みかんの甘さと千果のからっとした声に、体の緊張感がほぐれていく。
「そんで、鈴芽はその農園に行くところなの?」
「え、あ、うん、そう!」
ちょっと慌てて、私はスマホにもう一度写真を出した。いけないいけない、すっかり放課後井戸端気分になってた。私はあらためて写真を見てから、周囲の風景を確かめようと顔を上げた。
「ねえ千果、この写真の場所ってさ、この近くだと思う——」
我们一起笑了起来,橘子的香甜再加上千果爽朗的声音舒缓了不少我的紧张感。
“所以铃芽要去那个农场吗?”
“诶,啊,嗯,对了!”
我有点慌张的拿出手机再次看向照片,不好,不好,我这已经完全变成了放学后的闲扯模式了。我重新看了看照片,又抬头确认了一下周围风景。
“诶千果,我觉的这张照片上的地方就在这附近——。”
思うんだけど、という言葉が、喉で止まった。代わりに口から出たのは、掠れた息。
「……どしたん?鈴芽?」
返事が出来ない。千果が怪訝そうに私を覗き込むのが、気配で分かる。でも私の目は一点に縫い付けられてしまったみたいに、それから離せない。どうして。なぜこの場所に。ヒグラシの鳴き声が、いつの間にかぴたりと止んでいる。貯水池を狭んだ遠くの山肌で、カラスがギャアギャアと群れている。その群れを左右に割るようにして、赤黒い煙がゆっくりと立ち昇ってきている。うっすらと発光しているように見えるそれは——私たちにしか見えない、あの巨大なミミズだった。
我想……这句话堵在了喉咙里,取而代之的是倒吸的一口凉气。
“……怎么了?铃芽?”
我说不出话,千果正奇怪的看向我,我明明知道,但我的眼睛就好像被缝在上面了一样根本移不开。为什么,在这里。暮蝉的叫声不知道什么时候停下来了,蓄水池对面远处的山坡上,一群乌鸦正啊啊的叫着,只见红黑色的烟正慢慢地升起来,仿佛要把这群乌鸦左右散开。那个看着还隐隐发光的东西——这是只有我们才能看见的,那个巨大蚯蚓。
「あ、あの——」
声が震える。足元の草太さんを持ち上げて、千果に言う。
「ごめん、急用が出来て!ごめんな!」
「え、ええ?急用!?え?」
椅子を抱えて、私は反射的に走り出していた。千果の戸惑った声に振り返る余裕もなく、ミミズの見える方向へと山道を駆け上る。
“啊,那个——”
我提起了脚下的草太,声音有些颤抖的对千果说道。
“抱歉,突然有急事了!抱歉啊!”
“啊,诶诶?急事!?啊?”
我抱着椅子,条件反射般跑了起来,我都顾不上去回应千果疑惑的声音,朝着能看见蚯蚓的地方跑上了山路。
「草太さん、ミミズってどこにても出るの!?」
「この土地の後ろ戸が開いたんだ!早く閉じなければ——」
また地震が?足元からぞわりと悪寒が迫り上がり、その不快さを踏み潰すように私は足を速める。ミミズは太く長く、空に伸びていく。草太さんが、焦った声を出す。
「この距離を走ったんじゃ間に合わない!」
「そんな……!」
“草太先生,蚯蚓是哪都会出来吗!?”
“是这片土地的后门打开了!要快点关上才行——”
又要地震了?我的脚下传来一阵恶寒,我用力踏着这种不快感加速跑了起来。蚯蚓又粗又长,在天空中伸展着。草太焦急的喊道。
“这个距离跑过去的话会赶不上的!”
“怎么会……!”
「おーい、鈴芽ぇ―!」
背中から声が聞こえ、振り返ると、原付バイクに乗った千果だった。私の目の前でキュッとブレーキをかける。
「千果!」
「なんや分からんけど、急ぐんじゃろ?」真剣な顔で、私の目を見る。
「乗って!」
“嘿!铃芽——”
背后传来了声音,我们向后看去,是骑着电动车的千果,她在我们前面刹住了车。
“千果!”
“虽然不知道发生了什么,但你很急是吧?”她认真的看向我的眼睛。
“上来!”
流れる木々の隙間からチラチラと見えるミミズが、ぼんやりと赤銅色に光っている。いつの間にか陽が沈んでいる。車通りのない山道を遠慮なく飛ばす原付バイクの荷台に座り、私は千果にしがみついている。日没後の濃くなっていく藤色の中で、ミミズは空を流れる不吉な赤い夜光虫のようだ。
从快速驶过的树木缝隙中隐约可以看见蚯蚓正微微闪着红铜色的光芒。不知道什么时候太阳已经下山了。我们在没有车辆通行的山道上飞驰着,我坐在后座上紧紧的抱着千果。日落后颜色越来越深的紫色夜空中,蚯蚓正不祥的在上面流动,就像一个发着红光的夜光虫。
「ほんとにこっちでええの!?」
前の向いたままの千果が、風とエンジンに張り合って大声で叫ぶ。
「この先は何年か前に土砂崩れがあって、今は誰も住んどらんよ!」
「廃墟なの!?じゃあそこでいいの、お願い!」そう叫び返し、私は草太さんに口を寄せる。
「ねえ、また地震が起きるの?」
“真的要往这边走吗!?”
朝着前面的千果混合着风声和引擎声大喊着。
“这前面是好几年前滑坡的地方,现在没人住啊!”
“废墟啊!?那到那儿就成,辛苦了!”回复完,我贴近草太问道。
“喂,还会有地震吗?”
「ミミズは空に広がりながら地気を吸い上げ、重みを増していく。それが地上に倒れた時に地震が起きるんだ。その前に扉を閉めれば、防げる。今度こそ——!」
唐突に現れた大型の看板に、ヘッドライトが眩しく反射した。千果が急ブレーキをかける。看板には「土砂災害のため全面通行止め」と大きな文字が書かれ、地面にはいくつもカラーコーンが並んでいる。崩れた土砂で、その先の道路がせき止められている。バイクでは行けそうもない。あたりには、どこか爛れたようなあの甘い匂いが濃く漂っている。
“蚯蚓一边在天上伸展一边吸取地气,增加自己的重量,当它倒到地面上时就会发生地震。要在那之前关上门才行,能阻止的。这次一定——!”
前面突然冒出了一个大型指示牌,车照灯在上面反射出耀眼的光,于是千果赶紧踩了急刹车。指示牌上写着几个大字【因滑坡灾害全面禁止通行】,地面上还摆着几个锥形桶。因为滑坡崩塌的石砂阻拦了向前的道路,电动车看来是过不去了,周围弥漫着那股好像腐烂了一样的甜味。
「ここまでで平気!」
私はバイクから飛び降り、椅子を抱えたまま走り出した。
「千果、本当にありがとう!」
「え、ちょっとちょっと、鈴芽?」
千果の叫び声が背中で遠ざかる。早く早くと、鼓動が急かす。寸断された道路の奥、真っ暗な集落の向こうに、赤黒く発光するミミズが大きく見えている。足元はぬかるんでいる。ローファーで重い泥を蹴り上げながら私は走る。
“到这儿就行了!”
我从电动车上飞奔下来,抱着椅子就跑了出去。
“真的很感谢你!千果。”
“诶,等会等会,铃芽?”
千果的叫声越来越远了。快点,再快点,我的心跳加速起来。在这被阻断的道路深处,那一片漆黑的村落对面,闪着红黑色光芒的蚯蚓看起来更大了。脚下变得泥泞起来,我一边踢掉平底鞋上沉重的淤泥一边奔跑着。
「——鈴芽さん、君もここまででいい!」
突然に草太さんがそう言って、私の体を蹴って地面へと飛び降りた。リードから解放された犬のように、全速力で私から遠ざかっていく。
「え、草太さん、ちょっと!」
「これ以上は危険なんだ!あの子のところへ戻って!」
「草太さん!」
三本脚の獣のように見えるシルエットは、すぐに薄闇の瓦礫にまぎれて見えなくなってしまう。うそ、草太さん!もう一度そう叫んでも、返事は戻ってこない。
「——!」
“——铃芽小姐,你就到这儿吧!”
草太突然这么说道,然后踢开我的身体就蹦到了地上。就像从绳索中挣脱出来的狗一样,快速从我旁边跑开了。
“啊,草太先生,等等!”
“再继续往里会很危险的!你快回到那孩子的旁边去!”
“草太先生!”
那看起来像三条腿动物一样的影子很快就和昏暗的瓦堆混合在一起消失不见了。“不是吧,草太先生!”就算我再一次想叫住他,也没有任何回应了。
“——!”
思い出したように急に生きが上がり、私はその場所に立ち止まってしまう。肺が空気を欲しがって、体が勝手に大きく息を吸い込む。すると甘い匂いまでがたっぶりを胸に入ってしまって、私は激しいく咳き込む。必死に息を整えながら、匂いのことは忘れようとする。ないものと思おうとする。感じないようにする。時間をかけて、胸の中の濁った匂いを全部吐き出す。ようやく息を落ち着けて、私は浅い呼吸を心がけなから周囲を見回す。土砂に埋まれたままの屋根や電柱が、真っ黒な塊として無秩序に散らばっている。その奥には、空に向かって落ちていくような赤い大河がますます明るく見えている。足元の地面からは、その赤に向ってなにかが一斉に移動しているような不気味な地鳴りが、間断なく続いている。
我突然喘不过气来了,站在了原地,肺部就好像非常渴望空气一样,我不由得大口呼吸着空气,以至于那股甜甜的味道也充分进入了我的身体,我开始剧烈咳嗽起来。我拼命的调整着呼吸,想要假装忘却这股味道,当它不存在,也不想感受到。我终于费了好大劲,把胸中这股浑浊的气味都吐了出来,才平静了下来,我放慢了呼吸,用心像周围看去。被泥沙埋着的屋顶和电线杆,漆黑的堆着,散落在四处。在这里面,就好像向着天空落去的红色大河看起来越来越亮了。脚下的地里一直传来那种不祥的地鸣,就好像有什么东西在一齐向那红色移动一样。
——こんな場所に、私は一人でいる。なぜか一人きりで立つくしている。まただ、と私は思う。誰かの何かの手違いで、覚えるはずの悪夢からまだ覚められないままでいるような、どうしようもない不安と恐怖が迫り上がってくる。置き去りにされた子供のような気持ちになっている。泥に埋まれて傾いた屋根の形や、不思議にまっすぐ立ったままの塀や、何も映さない真っ黒な窓ガラスに、私は取り囲まれている。目尻にたまっていた涙がふいに溢れ、ミミズの赤色がそんな景色全部に滲んで広がっていく。家に帰れ、と彼は言った。あの子ところへ戻れ、と草太さんはそう言った。
——这样的一个地方,就我一个人,为什么就我一个人站在这儿。又来了,我想着。就好像是出了什么差错一样,导致本该从这噩梦中醒来的我却永远醒不来了一样,一种让人无奈的不安和恐怖升了上来,有种像是被抛弃了的孩子一样的感觉。被泥土埋在地里倾斜的屋顶,还能立起来的不可思议的围墙和什么都映照不出的漆黑玻璃,我被这些东西包围了。本就在眼角打转的泪水瞬间夺眶而出,蚯蚓那红色的光芒慢慢渗进了周围。回家去,他说过,回去那个孩子的旁边,草太先生这么说过。
「……千果のところに戻ったって」
私は声に出す。
「九州に戻ったって、家に戻ったって——」
吐き気を催す甘い匂いは、やっぽり今も私を取り囲んでいる。それはもう私の内側に、どうしようもなく既にある。見ないふりができないくらいに、くっきりとした異物としてここにある。肋骨の内側から、ふいに怒りに似た感情が湧きあがってくる。なんでまた。ここまできて。今さら、どうやって。
「どうしようもないじゃない!」
“就算让我回千果那!”
我喊出声。
“让我回九州,回家——!”
那个令人作呕的甜味到现在也还围绕着我,它已经在我内心深处牢牢地扎根了,它作为一个异物已经明显到我不能再视而不见了。我的心中突然涌出了一股怒火,为什么又让我回去!都已经到这儿了,事到如今,我该怎么办。
“不可能没办法的!”
全身から絞り出すように叫び、私は駆け出した。草太さんの消えた暗闇に向かって、暗闇に全力に走る。ローファーが泥を踏み、ガラスを踏み、何かのプラスチックを砕く。一歩走るごとに、恐怖と不安が薄れていく。そうだ、こっちだと私は思う。草太さんのいる方向に走れば、この不安はきっと消える。その逆に走ったら、きっと不安はますます募る、だからいま、私の走る方向は、こっちだ。
我用尽全身的力气大喊一声,然后跑了起来,向着让草太消失的那片黑暗处,那黑暗里全力跑去。我的平底鞋踩着淤泥,踏着碎玻璃,踩碎了地上了塑料。每跑一步,我的恐怖和不安都在减弱。没错,应该就是这里,朝着草太先生的方向跑的话,不安肯定会消失的吧,要是相反跑的话,我肯定会越发不安,所以我现在应该奔跑的方向是这边。
暗い坂道を登り切ると、視界が開けた。折り重ねった廃屋の先にぽっかりと校庭があり、ミミズが学校らしき建物から噴き出している。そこに向かった道を下る。無人の家屋の間を駆け抜ける。行く手に校門が見えてくる。学校の右手が山になっていて、そこから崩れた土砂が校庭の右半分を埋めている。私は門を抜け、校庭に駆け込む。土砂に沿って土嚢がずらりと並び、それは百メートルほど先の校舎まで続いている。
登上漆黑的坡道后,视野变得开阔了。在这些倒塌的废屋前面有一个空荡荡的操场,蚯蚓从学校的建筑中喷出。沿着那里的路往下走,穿过无人居住的房屋间隙,就能看见前面的校门了。学校的右边是一座山,所以因滑坡导致塌下来的泥沙把学校的右半部分都掩埋了。我穿过大门,跑进了操场。沙土旁边堆了一排沙袋,一直延伸到前方一百米左右的学校大楼。
「……学校が後ろ戸になってるの!?」
広い生徒用玄関口から、ミミズが激しい濁流となって噴き出している。その光に左下に、小さなシルエットがある。両開きの大きなアルミ戸の片側を、小さな子供椅子が懸命に押している。
「草太さん!」
「—鈴芽さん!?」
私の頭上を、赤い濁流が流れている。ぬかるんだ地面に、その光がぬらぬらと映っている。
「鍵を……!」
“……后门在学校里吗!?”
蚯蚓从宽敞的学生专用玄关处像浊流一样喷涌而出,在那光芒的左下角,有一个小小的身影。只见一个小小的儿童座椅正拼命的推着敞开的大铝门其中的一侧。
“草太先生!”
“——铃芽小姐!?”
我的头顶正流动着那红色的浊流,泥泞的地面正黏滑的倒映着它的红光。
“钥匙……!”
戸を押しながら彼がいう。草太さんの視線の先、私と玄関の中間あたりに、ミミズの光を受けて鈍く輝くものがある。草太さんが首から下げていたはずの、古い鍵だ。半ば泥に埋まれたそれを、私は走りながら右手ですくい取る。そのまま草太さんにところに駆け込む。足元がずるりと滑り、泥の中に横倒しに転んでしまう。でもすぐに体を起こし、草太さんに覆い被さるようにして、私は左手でアルミ戸の端を押した。
他一边推着门一边说道。在我和玄关的中间,有一个受蚯蚓的光芒所影响而隐隐发光的东西,是本应该挂在草太脖子上的那把古老的钥匙。它几乎被掩埋在了淤泥里,我边跑边伸出右手捞了起来,就这样奔向了草太的身边,结果脚下一滑,直接摔倒在了淤泥里。但我立刻站了起来,就好像盖在草太身上一样,用左手按住的铝门边缘。
「鈴芽さん——君は!」
草太さんも椅子の座面で戸の端を押しながら、私を見上げて怒鳴る。
「死ぬのが怖くないのか!?」
「怖くない!」
草太さんが息を呑む。でも、私は死ぬことなんて怖くない。もうずっと前から本当に、そんなことは怖くないのだ。左手で押すアルミ戸は、まるでその先に言葉の通じない誰かがいてでたらめな気分で押し戻しているかのように、気味の悪い手応えでガタガタと揺れている。私の右手は地面に着いていて、鍵を泥ごとぎゅっと握りしめている。
“铃芽小姐——你!”
草太先生边用椅座抵着门的边缘,边抬头冲我怒吼道。
“你不怕死吗!?”
“不怕!”
草太他屏住了呼吸。但是我不怕死,从很久以前就,这种事情一点都不害怕。我用左手推着的的铝门就好像说不通话一样,蛮横的正往外推,门开始剧烈的晃动,手掌中的触感变得令人不快起来。我只能用右手撑着地面,紧紧的握着那把沾满淤泥的钥匙。
「鍵が——」必死に戸を押しながら草太さんが言う。「濁流に押されて吹き飛んでしまったんだ。俺の手では鍵に届かなくて——助かった、君が来てくれて——」
彼は三本の脚で踏ん張るように、私は左腕に渾身の力を込めて、すこしずつ戸を押していく。ミミズの噴出は徐々に狭まっていく。もうすこし、あとすこしだ。私は懸命に押しながら、ミミズを見上げる。
“钥匙——”拼命推着门的草太喊道。“它在浊流喷出来时被吹走了,我够不到钥匙了——辛亏你来了——”
他岔开了三条腿,我的左手用尽全力一点一点的推着门,蚯蚓的喷涌慢慢变弱了。差一点,就差一点了,我一边拼命的推着门,一边抬头看着上面的蚯蚓。
「ああっ!」
ミミズが赤銅色の花となり、空に大きく開いている。校庭を見ると、地面から無数の金色の糸が生まえ、上空のミミズに向かって伸びていく。ミミズが地気を吸い上げているのだ。空の大輪となったミミズは、地気の重さをその内側にたっぷりと蓄え、地面に向かってゆっくり倒れ始める。
“啊啊!”
蚯蚓变成了红铜色的花,在空中展开了。只见从操场的地面里升出了无数条金色的线,朝着空中的蚯蚓伸去,这是它正在吸收地气。在空中变成大花的蚯蚓,充分在身体里储存完地气的重量后,开始向地面缓缓倒去。
「鈴芽さん、君が鍵をかけろ!」
私の胸の下で、草太さんが叫んだ。
「え!?」
「もう時間がない。目を閉じ、ここで暮らしていた人々のことを想え!」
「ええ!?」
「それで鍵穴が開く!」
「そんなこと言ったって——」
“铃芽,换你来上锁!”
在我胸下,草太喊着。
“啊!?”
“没时间了。闭上眼睛,去想象一下曾经生活在这里的人们!”
“啊啊!?”
“然后就会出现锁孔!”
“就算你这么说——”
草太さんを見る。彼はまっすぐに戸を睨んだまま、「頼む!」と切実な声で言う。
「俺には何も出来ないんだ——何もできなかった、この体では……!頼む、目を閉じて!」
その言葉の必死さに、私は弾かれるようにして目をつむった。でも、何をすれば?ここにいた人たちのことを想う?それってどうやって——。
「かつてここにあったはずの景色。ここにいたはずの人々。その感情。それを想って、声を聴くんだ——!」
我看向了草太,他正直直的注视着我。“拜托了!”他认真地说道。
“我已经做不到了——这副身体的话,什么都做不到……!拜托了,闭上眼睛!”
他说的很沉重,我不禁立刻闭上了眼睛,但是,我该做些什么?想象曾经生活在这里的人们?这要怎么想——。
“曾经本应出现的景色,本应出现在这里的人们,他们的情感,去想象这些,聆听他们的声音——!”
ここにあったはずの景色——私は思い描こうとする。山囲まれた学校。陽に輝く広い校庭。玄関の両脇には、私の高校と同じように蛇口の並んだ水飲み場がある。今は泥に埋まれたこの場所で、きっとジャージ姿の生徒たちが水を飲んだりしていたはず。千果。からりとしたあの笑顔。蛇口の水は甘く冷たく、「ようけリセットしんさい」と友達と笑いあう。おはよう。登校時には賑やかだったはずだ。おはよう、おはよう、おはよう。声が聞えてくる。テストのだるさ、教師の噂話、好きな子への告白のプレン。色が見えてくる。学年別の三色のジャージ。朝日を反射する白いセーラー服膝上まで詰めた紺色のスカート。第二ボタンまで開けたシャツの眩しさと、こっそりと染めた髪の色たち。
本应在这里的景色——我在心里描绘着。被群山环绕的学校,阳光灿烂的操场,玄关两侧有着一排和我高中一样用来喝水的水龙头。在这个被泥沙掩埋的地方,肯定有过很多穿着运动服的学生尽情的喝过水吧。千果那爽朗的笑容,水龙头里的水又甜又凉,“可以防紫外线哟。”她会笑着这么对朋友说。早上好,早上上学的时候一定很热闹,同学们互相问好的声音,我们一定能听到吧。无聊的考试,老师们的八卦,向喜欢的人告白。我能看到颜色了,不同年级的三色运动服,倒映着朝阳的白色水手服,卷到膝盖以上的藏青色学生裙,引人注意的一直敞到第二粒纽扣的衬衫和偷偷给头发染的颜色。
「——かけまくもかしこき日不見の神よ」
あの歌うような不思議な節回しで、草太さんが何かを唱えている。
「遠つ御祖の産土よ。久しく拝領つかまつったこの山河、かしこみかしこみ、謹んで——」
「……!」
“请恕我唤您尊名,日不见之神啊”
草太好像在唱着什么,像唱歌一样有着奇怪的旋律。
“我们的先祖产土神啊,我等长久依托您予的这山河,甚是受宠若惊,诚惶诚恐,请让我谦恭的把此奉还与您——”
“……!”
私の右手の中で、鍵が温度を帯びている。青く光っている。青い束のような光が鍵から立ち昇り、アルミ戸に集まっていく。戸の端を押す私の左手のすぐ横に、光の鍵穴のようなものが出来上がっていく。
「——今だ!」
草太さんが叫び。その声に押されるようにして、私は鍵を光に突き刺す。
「お返し申す——!」
我右手中的钥匙还带着温度,发出了蓝色的光芒,钥匙上还升出了蓝色光线一样的东西,向大铝门汇去。在我推着门的左手旁边,出现了一个像是由光形成的锁孔。
“——就是现在!”
草太大叫道。仿佛被他的声音所感染了一样,我立刻把钥匙插进了锁孔里。
“奉还与您——!”
草太さんのその叫びと同時に、私は反射的に挿し込んだ鍵を回す。ガチャリと何かが締まった手応えがあり、アルミ戸にはめられたガラスが一斉に割れて私たちの背中に降りそそぐ。——と、膨らみきった泡が割れるような音とともに、頭上のミミズが弾け散った。重い雨雲が一斉に吹き飛ばされたかのように、気圧が一気に軽くなる。
その数瞬後、きらきらと複雑な光を反射する雨が、シャワーで一吹きしたように私たちのいる廃墟をざーっと洗ったのだった。
「はあ、はあ、はあ……」
在草太叫喊的同时,我反射性的扭动了插进去的钥匙。咔嚓一声,有了一种什么被锁上了的手感,顿时铝门上的玻璃一齐裂开,落向了我们的后背。——然后,伴随着像是膨胀而破掉的泡泡一样的声音,头顶上的蚯蚓爆开了。就像沉重的风雨一齐被吹散了一样,气压一下子变低了。
片刻之后,雨点反射着各种复杂的光线,如同淋浴般冲刷着我们所在的废墟。
“哈啊,哈啊,哈啊……”
泥に上に座り込んだまま、私は息を整えながら空を見上げた。いつのまにか、いくつもの星が輝いている。気づけば夜の虫が合唱している。あたりには夏草の瑞々しい匂いが満ちている。学校の玄関は、無言のままに朽ちていく静かな廃墟へと戻っていた。
はは、と草太さんが隣で息を吐いた。
「え?」
「はは.......はははは!」
我坐在了淤泥中,一边调整着气息一边抬头看向了天空。不知从什么时候开始,群星已经在闪耀了。回过神来,夜晚的小虫已经在合唱了,周围已经充满了夏天青草的芳香。学校的玄关也已经默默的变回了原来寂静废墟的模样。
哈哈,草太在旁边吁了一口气。
“嗯?”
“哈哈……哈哈哈哈!”
可笑しそうに楽しそうに、草太さんが大声で笑う。カタンと体を動かし、私を見る。
「やったな、鈴芽さん。君は地震を防いだんだ!」
「え......」
地震を防いだ。私が?
「ほんとに......?」
熱い波のような感情がお腹から湧き上がってきて、私の口元を笑顔にしていく。
「......嘘みたい!やった、出来たっ、やったあっ!」
就像是非常开心一样,草太大笑着,咔哒的挪动着身体,看向了我。
“干得漂亮,铃芽小姐,你阻止了地震!”
“诶……”
我阻止了地震?
“真的吗……?”
瞬间有一种热浪从腹部涌上来了一样的感情,我也大笑了起来。
“……像做梦一样!好诶,我做到了,成功了!”
草太さんも笑っている。彼は体中泥だらけになっている。私の服も、きっと顔も、泥だらけだ。それが何かの証みたいで、こんなことまでも誇らしくて嬉しくて楽しい。
「ねえ、私たちって凄くない?」
草太さんにうんと顔を近づけて、私ははじゃいで言う。背板のくぼんだニつの穴に、その目に、私は草太さんの表情を見る。優しい笑顔がここにあると、はっきりとそう思う。
草太也笑了起来,他全身都是淤泥,我的衣服也,肯定脸上也全是。但这就像是什么证明,就算这样,我们也特别自豪,开心。
“喂,我们是不是很厉害?”
把脸靠近了草太,我兴奋的问。我从椅背上的两个凹槽中,也就是他的双眼中,看到了草太的表情,是那张温柔的笑脸,他肯定也是这么想的。
「すずめ すごーい」
「え」
幼い子供の声が、横からした。反射的に目をやる。すこし離れた暗闇の校庭に、ぼんやりと白く小さなシルエットがある。黄色い丸い目がこっちを見ている。長い尻尾をゆったりと振りながら、白猫が口を開く。
「うしろどは またひらくよ」
「——要石!」
“铃芽 好厉害”
“啊”
旁边传来了小孩的声音,我下意识的向那边看去,就在不远处阴暗的操场上,有一个又白又小的身影,那个黄色的大圆眼睛正看向我们这边,长长的尾巴正慢哟哟的摇晃着,白猫开口了。
“后门还会再开哦”
“——要石!”
草太さんがとっさに駆け出す——が、タイジンの姿はもう闇に消えている。
「……あいつが扉を開けたの?」
震える息で、思わず私は呟いた。草太さんはしばらくの間、猫の消えた先の暗闇をじっと睨んでいた。
草太迅速的冲了过去——但是,大臣的身影早已消失在了黑暗里。
“……是那家伙把门开开的吗?”
我颤抖的喘着气,不由得喃喃自语。有一段时间,草太就这么一直盯着白猫消失的那片黑暗一动不动。